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<密着独占取材> 若年層の貧困に迫る(1) 熊本地震で貧困加速

<密着独占取材> 若年層の貧困に迫る(1) 学生時代の方が可処分所得が多い!?

 

近年、労働しても十分な収入が得られず、貧困に苦しむ働く貧困層ワーキングプア)が増えているという。また、若者の低所得化も進み、格差社会が拡大している。様々なメディアが特集を組み、取材を進めている中で、当ブログも地方で貧困に喘ぐ若者を密着独占取材した。

フリーター時代の方が可処分所得が多い現状

 熊本県熊本市中央区。4月14日、15日に2度の震度7地震を記録した益城町から車で30分ほど離れた市街地にその若者Aさん(仮名)は住んでいる。Aさんは大学進学と同時に県内に就職。完全歩合での労働(正社員雇用では無く業務委託契約だったという)の職場を退職し、フリーターとして生計を立てた後、現在の仕事に転職したという。
「やっとの思いでした再就職先ですが、飲食店とコンビニのアルバイトを掛け持ちしていた頃の方が手取りが良いんですよね」
 Aさんはそう言って苦笑いする。入社二年目の彼の手取り額は15万円ほどだという。熊本の大卒新卒者では平均よりやや少ない程度。そこから家賃4万3千円、食費3万円、水道光熱費1万円、通信費1万円(携帯、インターネット)、奨学金の返済2万円、交際費2万円の計13万3千円を差し引くと残金は1万7千円だ。交際費2万円が抑えられるのではと指摘すると「仕事柄、付き合いでの飲み会が多く、これでも二次会にはあまり行かないようにしたりして抑えてるんです」と話す。では、地方都市での一人暮らしにしては家賃が少し高いのではと尋ねると、
 「4月までは家賃が3万円代のアパートに住んでいましたが、震災で退去することになりました。しばらく居候生活でしたが、仕事が落ち着いたのを機に不動産巡りをしていると中々良い条件の部屋が残って無かったんです」と苦悩を口にする。
 引越しや家電、家具の購入で30万円ほどかかり、貯金も無かった為、親戚に借金してなんとか新居での生活をスタートさせた。それでも、必要な生活品を全て揃えるには足りず、炊飯器や掃除機などは購入を先延ばしにしているという。
 たかが30万、と思うかもしれない。しかし、彼にとっては大金なのだ。もちろん、持ち家が全壊ししたり、廃業し借金を抱えた被災者の方々に比べると、微々たる負債だろうが。彼は行政の補助も受けることができず、ただ苦しんでいる。

復興に必要なのは現金

 Aさんの務める会社も震災の影響で売り上げが減少。ボーナス支給額も減額されたという。被災地熊本の企業では従業員に対し一時金や見舞金を支給している場合も多いが、Aさんの会社ではそれもなく、罹災証明書を取得したが、外壁と玄関のフレームが歪んでいるだけで、発行されたのは「一部損壊」。管理会社に玄関の修繕を依頼したが、一年以上かかると言われ断念して引越しを決意。引越し当日まで玄関をこじ開ける手配も出来ず、自力で玄関をこじ開け、2カ月ぶりに帰宅した。家具は倒れ、照明も落ち、悲惨な有様だったという。荷物を整理する暇もなく、引越し先の間取りがそれまで住んでいた部屋より狭くなるため、所持品の多くを処分した。
 「復興に必要なのは絆とか温もりじゃなく、現金です。政治家の訪問とかNPO団体とかではなく、福沢諭吉に来て欲しいですね。中小企業に補助金を出して事業を休載しても、その効果が従業員に回るまで時間がかかるし、そもそも効果が出るのかも怪しい。その間に生活が限界を迎えるかもしれない」
 現実問題として、行政や民間団体による支援は「自力ではどうにもならない人」や「明らかに大きな被害を受けている人」に偏る。そこそこの被害で、自分でなんとかならないことはないもない、というAさんのような中途半端な被災者は蚊帳の外だと言う。
 「まあ、お金なんて震災前から無かったんですけどね。それでも、心までは貧しくなりたくないと思っていますので、行政の対応が悪いとか、誰もなにもしてくれないと誰かを糾弾したくはないんです。こういう時だからこそ、自分の力で乗り越えていかないといけませんよね」
そう言ってAさんは立ち去っていった。

震災後、加速する苦しみ

実際に震災後、貧困層の苦しみは加速しているようだ。取材前まで筆者は「震災から二ヶ月も経つのに未だに避難所から動いていない人々は自ら解決する来のない奴らだ。これだけの時間があればどうにでも出来たはず。自業自得だ」と思っていた。今でも半分くらいはそう思っている。しかし、もともとAさん以上に貧困に喘いでいた人たちで、Aさん以上の被害を受けた人たちは本当に身動きが取れないのではないか。Aさんは先が見えないにしても、会社の事業は継続しており、低賃金ではあるが、当面の雇用は守られている。
 もともと、借金があり、貯金もなく、震災と共に失業し、家屋が全壊し、全てを失った人間が再起することは可能だろうか(そもそも借金有り貯金無しな時点で自業自得だが)。
 ギリギリの生活をしていた人間に震災はトドメを刺したのかもしれない。

 

(※注 Aさん=筆者の自作自演記事です)